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今日から記録を残そうと思う。

なぜなら、僕の弟である■■が、医者から余命宣告を受けたからだ。

■■は僕の唯一の家族だ。

日々の思い出を忘れないように。

■■がいなくなったあとも、僕が■■のことを忘れないように。

そのために残しておこうと思う。

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僕の家にはアンドロイドがいる。

まだプロトタイプだが、家事や掃除など基本的なことは大抵こなせる。

人間と話すことにも支障はない。

我ながら、なかなか良い出来だと思っている。

■■もプロトタイプを友達のように慕っている。

僕が研究で家を空けている間も、ずっと■■の傍にいてくれる。

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僕らのことには一切目もくれず、研究に明け暮れた上、早死にした母。

幼い僕らを置いて、どこかへ姿を眩ました父。

今更、あの二人に思い入れはない。

だが、生きていく上で近くに頼りにできる人間がいない心細さを、僕はよく知っている。

■■には、そんな思いをさせたくなかった。

だから、研究で度々外出しなければならない僕の代わりに、四六時中付き添ってくれる「友達」を作った。

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見た目は■■の案だ。

天使のような姿をしている。

なぜ天使なのかと聞いたら、

「ぼくがお空に行っても、ずっと一緒にいてくれるから」

と言っていた。

■■が死後というものをどう考えているのか、僕には分からない。

けれど、偽物の天使でも■■に付き添ってくれるのなら。

安心して■■を託せると思った。

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プロトタイプに料理を作ってもらい、■■と一緒に食べた。

僕の料理とは違って美味しい。

■■も喜んで食べていた。

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■■が笑う。

プロトタイプも笑う。

それを見ている僕も、少しだけ安心した。

こんな日が、ずっと続けばいいと思った。

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僕は最近、■■に隠れて準備をしている。

アンドロイドに人間の意識を移す─そういったものだ。

もちろん、そんなことを■■に話すつもりはない。

倫理的に許されることではない。

■■がいなくなってしまう前に、何かできることがあるのなら。

僕はそれに縋りたかった。

だから、誰にも知られないように少しずつ準備を進めている。

研究所の奥に、■■のためのアンドロイドを一体。

完成にはもう少しかかる。

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■■の身体が限界を迎える前に間に合わせたい。

……間に合わせなければならない。

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他所に出向いている時、プロトタイプから知らせが来た。

■■が倒れた、と。

僕はすぐに家へ戻った。

しかし、遅かった。

■■は息絶えていた。​

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それからの記憶がない。

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まだ一緒にいてほしい。

唯一の血のつながった人に。

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そう、だから、

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だから、作っていたのに。

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……間に合わなかった。

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僕は逃げた。

全てを放棄した。

プロトタイプも。

研究所も。

■■のために作っていたものも。

全部置いて行った。

死んでしまいたい。

■■がいないのなら、何も意味がない。

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結局、死にきれずに戻ってきた。

そこには信じがたい光景があった。

まず、研究所の天井が破壊されていた。

中が滅茶苦茶になっている。

何があった。

そして。

動くはずのないアンドロイドが動いていた。

それは■■を模したもの。

ひそかに作っていた、■■のための器だった。

■■の意識を移すために作っていたもの。

箱の中に入れて、眠らせたはずだった。

なのに、動いている。

しかも、記憶とは違った奇妙な髪色をしている。

隣ではプロトタイプが、なんとも言えない顔をしていた。

……お前、何か知っているな。

そう思ったが、プロトタイプは僕と目を合わせようとしない。

奇妙なアンドロイドは僕を見るなり、ぱっと顔を明るくした。

「はじめまして」

そう言った。

声は■■に似ていた。

というか、一緒だ。

■■から録音したものを使ったのだから当然だ。

やめてくれ。

その姿と声で話しかけないでくれ。

僕は、そいつが■■ではないことを知っている。

それなのに、■■と同じ姿をしている。

「……お前は誰だ」

そう聞いた。

そいつは少し考えてから、

「ぼくは宇宙から来たの!」

と答えた。

……どうやら、悪い夢を見ているようだ。

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プロトタイプに聞いてみた。

だが、僕には口を利かない。

「……迷子だから拾っただけだよ」

それだけ言って、どこかへ行ってしまった。

何が起こったんだ。

調べることにした。

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色々調べているうちに、少しずつ分かってきた。

あのアンドロイドには、何かが入り込んでいる。

正確には、寄生……という言葉が一番近いのかもしれない。

アイツには睡眠という概念があるらしい。

昨晩、眠っているうちに身体を調べようとした。

中を開こうとしたところで、謎の触手に襲われた。

死ぬかと思った。

あれはアンドロイドに備わっている機能ではない。

少なくとも、僕はあんなものを作った覚えはない。

宇宙から来た生命体。

本人が無邪気に話していた。

この星に来る途中で迷子になったらしい。

そして、偶然ここに降ってきた。

ただ、重要なことはあまり覚えていないらしい。

自分がどこから来たのか。

どうしてここへ来たのか。

なぜこの身体に入ったのか。

ほとんど何も分かっていない。

しかし、本人はその身体を自分自身のものだと思っている節がある。

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■■ではない誰かが、■■の姿をしている。

気に入らない。

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奴をアンドロイドから追い出そうとした。

何度か試したが、上手くいかなかった。

身体の中にいる何かが、僕を攻撃してくる。

どうやら意思を持って攻撃しているわけではないらしい。

宿主を守ろうとする、本能のようなものだろう。

……それにしても、危うく死ぬところだった。

もう二度とやらない。

たぶん。

​

…………もう疲れた。

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鬱陶しい奴が、

「ここにいてもいい?」

と聞いてきた。

僕は答えなかった。

しばらく黙っていると、

「だめ?」

と、また聞いてきた。

……ずるい。

その顔でそんなことを言うな。

結局、追い出せなかった。

僕自身、これ以上何かやる気力すらないのだから。

しばらくはここに置いておく。

別に受け入れたわけではない。

■■の代わりだと思っているわけでもない。

ただ、行く場所がないというなら。

ここにいればいい。

それだけだ。

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今日、奴がプロトタイプと一緒に料理を作っていた。

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奴も食事ができるらしい。

ボディはそう作った覚えはないのだが。

……あの身体の中にいる生命体が何かしているのだろう。

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味は、まあまあだった。

■■が好きだった料理だった。

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「これ、おいしいね」

と奴が言った。

僕は何も答えなかった。

でも、久しぶりに誰かと食卓を囲んだ気がした。​

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